人も電気も絶妙な距離
コロナ禍ではマスクで飛沫を封じ、アクリル板でさらに接触を封じ、目の前にいるのに、
人と人との距離感を感じ、表情も発言もわかり難いことが多かったですね。
ようやく、いろんな規制も緩和されて、本来の距離感が少しずつ戻ってきていますが、
都会の通勤ラッシュの満員電車の距離感まで 0 に戻ったと思うと少し距離感があるほうが心地良いですね。
私たちは普段エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジやテレビ等の電気製品を何気なく使っていますが、
そんな電気製品には安全を確保するために決められた距離があります。
テレビのバラエティ番組の罰ゲームで電気でビリビリさせたりしていますよね。
家のコンセントにはAC100Vがきており、それに触れるとビリビリどころではすみません。
100V(コンセントの中)に直接触れると感電の危険が伴い、命にも関わってきますので、
安全で使用できるように電気製品において絶縁は最重要なのです。
電気製品の中で電流が流れる導電体同士のショート(短絡≒ビリビリ、バチバチ)を防ぐために
必要な距離のことを絶縁距離と言います。
この絶縁距離が正しく保たれていないと電気は空間を通電してしまうため、
必ずある程度の距離を確保しなければならないのです。
電気製品の内部では私たちが安全に使えるように様々な絶縁が施されています。
絶縁されていない電子部品(特に金属)に絶縁物を被せたり、絶縁テープで保護しています。
ショートを防ぐためですが、もし十分な絶縁距離が確保できていないと、どうなるのでしょうか…
導電体同士がバチバチして機器の破損や異常発熱、火災等が発生する危険性もあります。
大事故にもつながる恐れがあるため、絶縁距離は安全規格等で厳密に定められています。
“距離” と言ってもミリ(mm)単位なのですが、製品のカテゴリーや安全規格ごとで変わってきます。
規格上では「空間距離」「沿面距離」といった2つに分かれており、絶縁の種類によっても必要な
絶縁距離が変化します。
製品やその製品の必要な安全規格により絶縁の種類は変わってきます。
絶縁の種類 | ||
---|---|---|
厳 し い |
機能絶縁・・・・機器本来の動作のためだけに必要な絶縁 | |
基礎絶縁・・・・感電に対して基本的な保護をする絶縁 | ||
付加絶縁・・・・基礎絶縁が破壊した場合の感電リスクを低減するため、基礎絶縁に加えて施す独立の絶縁 | ||
二重絶縁・・・・基礎絶縁 + 付加絶縁 | ||
強化絶縁・・・・二重絶縁と同等以上の感電に対して保護をする単一の絶縁 |
どの規格だから一概に何mm必要というわけではなく、用途や使用環境(汚損度)、仕様によっても変わります。工場等の埃がたまる環境だったり、高電圧や人命に関わる機器等、使用条件が厳しい場合は相応の距離が要求されます。
そのため製品設計を行う際は、絶縁距離が具体的にどの部分を指しているか、把握しておくことが必要不可欠です。
トランス設計においても絶縁距離は最も重要なパラメータの1つです。
必要な絶縁距離によって、トランスサイズがおおよそ決まってしまうなんてこともあります。
後々実は絶縁距離が足りない!となると、トランスサイズを変更し、1から設計をやり直すことも…
最悪、基板のレイアウト、部品の配置変更になる場合もあります。
ボビンという小さなスペースに巻線するため、絶縁距離が1mm違うだけも大きく仕様が変わってしまうのです。
弊社だけでは実際どれほど絶縁距離が必要かはっきりとは判断できず、案件を頂いた際は必ず確認しています。最後の最後で絶縁距離が足りないなんてことにならないよう、事前に話し合い最適な提案を致します。