温度上昇はたし算?ひき算?
前回の【今さら聞けない】エネルギー損失では、トランスの損失による発熱を説明しました。
トランスの温度上昇値は、動作エネルギー(=トランスの出力)の大きさで決まります。
初動では温度は急激に上がりますが、出力が一定である限り、次第にゆるやかな温度上昇になり、
やがて一定の温度から変化しなくなります。
この温度を飽和温度といいます。
しかし、トランスの許容最大温度は、周囲温度も考慮する必要があります。
設計時に、トランスの設置環境や用途をお伺いするのは、このためでもあります。
仮にトランスの温度上昇値を50℃とした場合、周囲温度が0℃であれば到達温度は50℃ですが、
周囲温度が60度であれば、トランスの到達温度は50+60=110℃、
これを飽和温度と考える必要があります。
同じトランスが様々な環境に置かれる場合、そのトランスの温度上昇値を把握しておけば、
周囲温度が変わっても飽和温度を計算できます。
飽和温度(トランス温度上昇値 + 周囲温度) ≦ トランスの最大許容温度
よって本記事タイトルの答えはたし算となります。
逆に周囲温度60℃ – トランス温度上昇50度=10℃しか差が無いから60℃に耐えられる
トランスで大丈夫!という引き算は間違いですのでご注意ください。
上記のトランスの最大許容温度を超えて動作した場合、
銅線やテープが溶け、事故につながる恐れがあります。
そのため、仕様書に記載される動作周囲温度や温度上昇値は重要な要素となります。
次回は、トランスの最大許容温度を決定する、絶縁種別についてお話しします。