今回は以前『電圧検出用トランスってなに?』でご紹介したVT(Voltage transformer)についてもう少し掘り下げてお話します。
単にVTといっても用途によって2種類に分かれます。(CTも同様です。)
ある入力電圧範囲における出力特性を重視したものと、入力側の異常状態検出を目的としたものとで、定格電圧に対する考え方が異なります。
自己損失がない理想のトランスはどこまでも巻数比=電圧比となりますが、現実のトランスには自己損失があり、入力電圧が高いほど拡大するため入出力電圧の比例関係は崩れていきます(下図参照)。
変圧器では入力側の電力=出力側の電力+損失というエネルギー保存則が成り立ちます。
損失については「今さら聞けないトランスの基本 Vol.1」をご参照ください。
異常状態の検出を目的としたVTの場合、定格電圧以上の過電圧部分に異常ラインが設定される為、定格電圧ではなく最大電圧でトランスを設計します。
過電圧部分で比例関係が崩れていると、正確な入力電圧が把握できない事は勿論、異常を検出した時には装置等が故障している可能性があるからです。
直線性誤差を小さくし比例関係を伸ばす為には巻数を増やす、高透磁率のコアを使うなど様々な手法がありますが、過剰品質かどうかも同時に意識します。
最後になりますが、このようにトランスは用途によって異なる考え方の設計をする場合があります。
同じVA容量でも用途が違うと思わぬ事故を引き起こす可能性があるので注意したいですね。